【蛸壷屋】金髪ロリのパイパンマンコが丸見えな作品
本作の概要だけを見ると、いわゆるインパクト重視の「グロ系」あるいは、過激なネタを想像したくなる方も多いかもしれない。しかし、本作には、確かにグロテスクな場面はあるものの、史実に対する深い理解と洞察、そして、主人公みほの命に対する思いが貫かれており、良い意味で期待を裏切る出来である。そこには薄っぺらな軍オタ的ナチス持ち上げ要素もなく、共産趣味もない。そこには、主人公みほの優しい性格ながら人殺しを肯定する戦車道の家元に生まれついてしまったことに対する葛藤があり、人生がある。登場人物たちの行動の理由が即座に理解しきれないこともあるが、終盤の展開で理由が納得できるように話が構成されており、そこらへんは素晴らしいとしか言いようがない。 最終章において、映画「ゆきゆきて神軍」のオマージュ展開があり、そこである意味タイトル回収となるのだが、若干コマが足りない箇所があり、「ゆきゆきて神軍」を見てないとちょっと?マークが浮かぶかもしれないシーンがあるのだが、それを含めて見ても、最後は感動のフィナーレとなっている。主人公みほの死なせてしまった戦友たちへの愚直なまでの贖罪意識は、元ネタの「ゆきゆきて神軍」の奥崎のようですらあり、本当の戦争体験者のようであり、リアリティ溢れるものになっている。 最後に軍オタ的なものはない、と言い切ってしまったが、軍オタの女の子(名前はあえて出さないが)が最期まで自分の好きな気持ちを貫く様子も素晴らしかったと申し添えておく。 映画にあまり詳しくない方々もこの機会にいくつかのネタ元の映画を見てみるのはいかがだろうか。 総じて本作は、作者の良心と洞察、納得感溢れる構成によって出来た奇跡の名作同人誌と言えるだろう。